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 何も、ない――。
 いや、有り余るほどあるのだ。見渡す限りの、瓦礫と土砂が。
 茫然と立ち尽くす頬に、ふわりと風が寄り添う。感情も涙も、その柔らかさに触れてさえ返事を返さない。
 瞼を閉じ、もう一度目を開ける。何も変わらない。変わり果てた故郷は何も変わってはくれなかった。
 神は……神は何処だ。この荒れ果てた大地に宿る神はいないのか。護る神は去ってしまったか。
 息を吸い込み、辺りを見回す。
 木片の陰に、赤いチェックの布が覗いている。歩み寄って手に取る。
 オルゴールだった。スカートをはいたクマがゆっくり首を回しながら『上を向いて歩こう』を奏でるそれは、幼い日の私のおしゃべり相手だった。今まであった嫌な事は全部このクマが知っている。もちろん、楽しい事も。
 ぽろん、とオルゴールが鳴った。クマが小首を傾げてのんびりと見つめてきている。
 堰を切った様に涙が溢れ来た。十分二十分、三十分、一時間……私はしゃがみ込んでただただ泣き続けた。心の限り、声を上げて泣いた。
 手で涙を拭いながらふと傍らに目をやった。赤いレンガが転がっている。数年前に亡くした父がいつまでも悩んでようやく決めた、マイホームの塀。目でも温もりを感じられるだろう、と自慢げに撫でていた父。
 私はレンガを一つ、地面に置いた。その上にそっとクマを載せる。
 目を閉じて天を仰ぐ。
 いつかこの記憶が薄れ、痛みがなくなったとしても、決して忘れはしない。この何処までも見渡せる風景を、そして埋め尽くす瓦礫の中に、パンドラの箱のごとくに遺されていたものを。
 希望。
 風は、吹いている。

(AKB48『風は吹いている』より着想を得て)


かなり難しい問題でもありますし、扱う事を躊躇っていました。
被災した方々の心を傷つけはしないだろうか、そんな甘いものじゃないんだ、とお叱りを受けるのではないか、と。
でも、どうしても今、書きたかったのです。
クリスマスムードになって、表面上去年までと何も変わらないこのごろ。自分の身ばかりを気にして、安全の確認されている放射性廃棄物の受け入れを拒否する都会。食べ物の風評被害。
風化しかけているんじゃないか? 何も終わってなどいないのに。
人の事を言える立場には私もいません。忘れはしないものの、直後よりもかなり実感は減ってきました。
先日テレビ番組でAKB48のこの歌を聴き、心臓が大きく跳ね上がったのを感じました。
まざまざと目に浮かぶ、鮮烈なイメージ。もう一度この歌を通して今起こっている事を再認識したいと思ったのです。
これからの季節が一番きつい東北。自分の出来る事は何なのか、真剣に考えようと思います。
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